第10回食べたくないときでも口にできる料理を探す患者さんへ

川口 美喜子
大妻女子大学 家政学部食物学科 教授
管理栄養士

「食べられるときに食べたらいい」とは言われるけれど…

「食べたくないときは、食べることを考えることも、食べ物を思い浮かべることも、食べられるものを調理する気にもなれません。そんなときはどうしたら食べられますか?」
このような患者さんの問いに、医師や看護師、栄養士はしばしば「食べられないときは無理に食べなくていいんですよ。食べられるときに食べたらいいんです」と答えます。
気遣って言ってくれていることを感じる一方で、その答えでは解消しない思いもある…そのような葛藤を抱く患者さんは少なくないようです。

食べたくない、食べられない患者さんの葛藤

食べたくない、食べられない患者さんの葛藤

闘病中の患者さんは、食べたいものが思い浮かばない、食事の準備もしたくない、食べ物の話もしたくない、そんなときがあります。しかし一方で、食べられないことへの不安もあります。いつ食べられるようになるのか先が見えないときは、「本当に食べなくてもよいのか?」という不安のなかにいます。
また、食べられないことを心配していろいろな提案をしたり、あえて食の話題を避けたりする家族の気遣いも伝わってきます。
患者さんは「食べられない時期」をそのような複雑な気持ちで過ごしていることが少なくないことと思います。

そうした不安を払拭したい患者さんから「食べたいときに食べたらいいんですよね?」と同意を求められることがあります。
こうしたとき、私がいつもお話ししているのは、週に一度体重を測り、2%以上の体重減少がみられたら(たとえば元の体重が50kgの人の場合、1週間で1kg以上の減少が続いたら)、栄養剤の利用も含めて、食べることや栄養摂取について考えようということです。目安がわかれば、むやみに不安なままでいる必要もなく、対策も立てやすくなるからです。

回転寿司は「食べたいもの探し」に最適?!

回転寿司は「食べたいもの探し」に最適?!

ある患者さんが、「食べたいものが何も思い浮かばないときは回転寿司に行きます。最近の回転寿司は、お寿司以外にもいろんな食べ物が回ってきて楽しいんです。意外と食べられるものがそこにあったりするんですよ」と話してくれました。私も回転寿司に行くことがあるので、その話題で盛り上がりました。回転寿司は、食べられない方にとって、食べたいものを見つけて食べられる場所、誰にも遠慮しないで自分のペースで食べられる場所としてよい選択肢となるかもしれません。

また、食べられなくて不安に感じているときに、一杯の紅茶やくず湯でも飲むことができると気持ちが楽になることがあります。食べられないことでどんどん気分が落ち込んでしまった方からは、「温かいものを飲むとほっとしますね」という言葉がしばしば聞かれます。

意外なものが食べやすいこともある

化学療法後、食欲不振になったある患者さんが食べられたものは、おろし大根にかつお節と醤油をかけたご飯、卵かけご飯、シンプルな味の月見うどん、きゅうりとキャベツの即席漬け、干しがれいの干物、レアチーズケーキ、生フルーツのシャーベット、ポタージュスープなどだったそうです。

以前はそこまで好んでは食べなかったものが、意外に食べやすいものだったりすることもあるでしょう。「食べられない」ことを気に病みすぎずに、体重の減少に少し目を配りながら、少量ずついろいろ試していけるとよいですね。

こんなレシピ、どうかしら?

食べたくないときは、料理する気持ちにもならない、調理の匂いも気になるなど、とにかく食べることを避けたいと思うものですが、一方で、食べなくては体力が落ちていくのではないかという不安もつきまといます。
そこで今回は、食べにくいときでもちょこっとつまめるものや、口にしやすくエネルギーになるものを提案します。ぜひ試してみてください。

おことわり

「がんとともに生きる~「食」は笑顔のみなもと~」に掲載の記事は、正確性、安全性に細心の注意を払って作成しておりますが、本コンテンツに記載された内容の実施等によって生じたトラブル、事故、障害等の事態に対しては、一切の責を負いかねます。食事制限の必要性や内容、療養上の注意点は個々の患者さんによって異なるため、ご心配な点等は必ず主治医や医療従事者に相談のうえ、指導に従ってください。