第6回口腔や頭頸部の治療のために
飲み込みにくさがある患者さんへ

川口 美喜子
大妻女子大学 家政学部食物学科 教授
管理栄養士

口から食べることに困難を抱える患者さんとの出会い

口から食べることに困難を抱える患者さんとの出会い

口腔や咽頭、喉頭の治療のために手術療法や放射線治療、化学療法を受ける患者さんでは、食べたものが最初に通る口やのどに副作用や障害が生じます。空腹感はあっても味や香りがしない、唾液が分泌されない、飲み込みが難しいなど、さまざまな症状のために食事そのものが嫌になってしまったり、食事からの満足感を得られないことがあります。
しかし、必要な治療を継続していくためには、身体に必要な栄養量を摂らなければ、体力や筋力の維持、免疫力の低下を防ぐことができません。

ある働き盛りの男性患者さんからは、「飲み込みが難しく、食べるのに時間がかかってしまい、食事を全部食べ終える前に疲れ切ってしまいます。こんな状態でも、筋力を落とさないで済む食事を教えてもらえませんか?」と相談を受けました。
また、術後口から食べることが困難になったために胃瘻(いろう)を造設したある患者さんからは、毎日胃瘻から栄養剤を入れることに対して、「味も香りもわからないし、口から食べることもできない。それでも、これでこの先も生きていくのだと思って栄養剤を眺めていると、つらくなる」とのお気持ちをうかがいました。

私は、食べる喜び、楽しみを伝えたいと思いながらも、患者さんの思いに応えられないもどかしさを感じましたが、胃瘻からではあるものの“普通のもの”が身体に入っていくようにと、以後の食事の際には栄養剤だけでなくトマトジュースやオレンジジュースなども準備しました。患者さんは表情を緩められ、少しだけ満足していただくことができました。

体に必要なエネルギーや栄養を摂るための工夫

軟らか食・ペースト食だっておいしくつくれる

たとえ病気そのものや治療のために、噛むことや飲み込むことが難しくなったとしても、必要エネルギー量と栄養量を確保することは大切な目標です。食事でうまく必要量を摂取できないときには、不足分を栄養剤で補うことも大切です。あるいは、牛乳をベースにしたココアやミルクセーキにとろみをつけて飲むのもよいでしょう。抹茶オレ(濃いめに出した煎茶30mLを、温めた60mLの牛乳と混ぜ、砂糖小さじ1を加える。個々人の状態に応じてとろみ剤も加える)や温泉卵(沸騰したお湯5Lに水150mLを加えた鍋に、室温に戻した卵を入れ、ふたをして15分間置くだけで簡単にできる)などは食べやすく人気があります。

軟らか食・ペースト食だっておいしくつくれる

飲み込みが困難な方によく提供されるペースト食は、「何の食べ物か見た目でわからず、おいしくなさそう」「食欲をそそらない」など、試食をしたことのない方からは不評です。
しかし、そんなことはありません。食べやすく、見た目にもきれいな、患者さんの想いをかなえるような軟らか食やペースト食をつくることはきっとできます。長芋を使ったおはぎ、すりおろしたきゅうりの酢の物、芋きんとんの代わりに、レモンを効かせたきんとんペースト……。好きだった野菜を使って見た目よく、心を込めて仕上げた軟らか食やペースト食は、きっと素晴らしい治療食になるでしょう。

川口美喜子(かわぐちみきこ)プロフィール

川口美喜子(かわぐちみきこ)プロフィール 大妻女子大学 家政学部 食物学科教授、管理栄養士、医学博士。
専門は病態栄養学、がん病態栄養並びにスポーツ栄養。2005年5月島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働、2013年4月より現職。

こんなレシピ、どうかしら?

そこで今回は、滑らかで口当たりがよく、その方の噛む力や飲み込む力の状態に合わせて軟らかく調整することができるレシピを紹介します。もちろん、噛む力や飲み込む力に問題のない人にとってもおいしく食べられるものです。だれにでも食べやすく、一緒に同じ食事を囲む喜びや楽しみも損なわない料理のヒントになれば嬉しく思います。

【注意】噛む力や飲み込む力は、患者さん一人ひとりで大きく異なり、ちょうどよい硬さや食べやすいものも異なります。ここで紹介するレシピがご本人の状態に合わない場合もありえます。食べにくい場合は無理をせず、医師や管理栄養士に相談してください。

「コレっていいね!」では、みんなの一歩が気になることや知りたいことなどを中心に、知ってトクする市販の食品や飲料、食事以外のサービスなどをご紹介いたします。さて、今回ご紹介するのは…

知ってトクする市販の食品や飲料、
食事以外のサービスなどをご紹介!

軟らかいお食事を毎日作り続ける事は大変ですよね。とは言え、売っている刻み食やペースト状の食事では、あまり食欲がわかないのではないでしょうか?
食欲がわくこと、食事が楽しみであることは、栄養を取り込むための最初のきっかけです。疲れているときや、時間がないときであっても、食べやすく、見た目もよくて、美味しい食事をしたい、そんな想いをかなえてくれる食事はあるのでしょうか?

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おことわり

「がんとともに生きる~「食」は笑顔のみなもと~」に掲載の記事は、正確性、安全性に細心の注意を払って作成しておりますが、本コンテンツに記載された内容の実施等によって生じたトラブル、事故、障害等の事態に対しては、一切の責を負いかねます。食事制限の必要性や内容、療養上の注意点は個々の患者さんによって異なるため、ご心配な点等は必ず主治医や医療従事者に相談のうえ、指導に従ってください。