第2回治療の副作用で味がわからない・味見がつらい
それでも家族に食事をつくりたい患者さんへ

川口 美喜子
大妻女子大学 家政学部食物学科 教授
管理栄養士

「息子に夜食をつくりたい」がん患者Aさんとの出会い

「息子に夜食をつくりたい」がん患者Aさんのこと

「高校受験を控える息子に夜食をつくりたいんです」
寒さの訪れを感じる12月初旬、乳がん治療のために外来化学療法を行っている女性患者Aさんからそんな相談を受けました。

「息子が受験のため、毎晩遅くまで頑張っています。母親として何かしてやりたい思いでいます。温かな夜食を出して、『頑張って』と声をかけたいけれど、冷たい物や熱い物を持つとしびれ感があったり、治療を終えた数日は吐き気の副作用があります。台所に立ち、料理をするのがつらいときもあります。でも、できることなら息子を夜食で励ましたい思いで一杯なのです」
そう言って栄養指導を希望されたのです。

母として息子さんに夜食をつくりたい――ご自身の患者としてのつらさよりも、母であり、食事づくりの担い手として家庭を支えたいと思うその気持ちに、私は胸を打たれました。そこで、Aさんの思いを支えるために、いくつかの提案をしました。

味がわからなくても、味見をしなくても、おいしい食事はつくれる!

味がわからなくても、味見をしなくても、おいしい食事はつくれる!

酢の物が口にしみる、醤油やだしを口にすると吐き気が誘発される、味覚が低下していて食事をつくるのがつらいと思っている方は少なからずいます。そんなときには、「基本の味付け」(第1回参照)を一覧にした覚え紙を台所に貼っておくことを勧めています。これによって、煮物や酢の物、炊き込みご飯などは、味見をしないでもほぼ標準の味付けができます。Aさんにも、この便利な調味料について話しました。

調理中のにおいが気になる方は、電子レンジを使った簡単料理をいくつか覚えておくのも便利です。調理時間が短くて済み、においが気になることもなく、温かいまま食卓に並べることができます。
Aさんは、「夜食に適した温かい食事」として、うどんやラーメンを思い浮かべていたようでしたが、Aさんが無理なくつくれ、かつ息子さんの栄養バランスにも配慮して、「たとえばキャベツとピーマンの上に冷凍シュウマイを乗せて電子レンジで温めるメニューはどうでしょう?」と提案してみました。Aさんの表情は、段々と明るくなっていきました。

つくるのがつらい、でもつくりたい・つくらねばならない――そんなときの食材としてお勧めしたいのは、“新鮮かつ旬の物”です。新鮮で旬な食材は、わずかな調味料、たとえば塩や醤油、ポン酢、マヨネーズなどをかけるだけで、蒸す・焼く・ゆでるといった手間のかかる調理を簡略化しても、思いのほかおいしく食べることができます。においや苦みも少なく、下処理も簡単です。

川口美喜子(かわぐちみきこ)プロフィール

川口美喜子(かわぐちみきこ)プロフィール 大妻女子大学 家政学部 食物学科教授、管理栄養士、医学博士。
専門は病態栄養学、がん病態栄養並びにスポーツ栄養。2005年5月島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働、2013年4月より現職。

こんなレシピ、どうかしら?

そこで今回は、電子レンジと無水調理のできる鍋、炊飯器を使用した簡単レシピを紹介したいと思います。旬の野菜を使って手軽においしくつくりましょう。
また、常備しておくと便利で様々な料理にかけるだけでおいしい「ポン酢」のレシピもぜひ参考にしてください。

おことわり

「がんとともに生きる~「食」は笑顔のみなもと~」に掲載の記事は、正確性、安全性に細心の注意を払って作成しておりますが、本コンテンツに記載された内容の実施等によって生じたトラブル、事故、障害等の事態に対しては、一切の責を負いかねます。食事制限の必要性や内容、療養上の注意点は個々の患者さんによって異なるため、ご心配な点等は必ず主治医や医療従事者に相談のうえ、指導に従ってください。